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mάːmə

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 それは、懺悔のための場所であった。
 その建物を目の前にしたとき、私はそう悟った。三角形の屋根に、小さな窓、古ぼけた木のドア。簡素な塗りの白い壁は、ここが己を悔やむための場所だという記憶を思い出させた。
――記憶?
 私は、気がつけばこの森にいた。その記憶というものは、いつのものであったのだろうか。思いだそうと建物の周りを歩いてみるが、それがいつかの記憶であったと気づいた感覚は、薄れていくばかりだった。
――そうだ。記憶じゃない。見れば分かるというだけのことなんだ。ここは、己を悔やむ場所……。
「違うよ」
 突然、声がした。あの恐ろしい声ではなかった。
「やあ、こんにちは。しまいの子」
 声のした方を振り返ると、木のドアの前に、一人の子供が立っていた。淡い金髪は背中を覆うように長く伸び、ところどころ跳ねている。白い寝間着と裸足の姿は、私と同じ格好だった。
「終いの子?」
「きみの呼び名だよ、きみたちには名前がないから……。さ、中へ入ろう」
 子供は少しだけ首を傾げて、ドアの方を見やる。私は、彼――少年か少女かはっきりとしない――に歩み寄り、その顔を見た。
 薄紅色の頬に、緑の瞳。神経質そうにも見える繊細な顔立ちと、それに似合わない強気な笑み。私はその顔を見て、彼が人間に似て非なるものであるように感じた。
「へへ、そんなに僕の顔が好き?」
 彼は私の顔を覗き込むように背を丸め、上目遣いの笑みを浮かべた。私は彼に魅了されていたような気がして、慌てて質問で取り繕う。
「あ、あなたの名前は?」
「僕の名前? えっとねえ、うーん……」
 彼は薄い唇を尖らせ、首をあちこち捻りながら悩んでいる。まるで、今まさに名前を考えている、という様子だ。
「僕は……プランタ。プランタだよ、終いの子」
 そう言って、彼――プランタは、目を細めて笑い、古ぼけた木のドアを開いた。